元ガリガリの筋トレ日記

【読書メモ】ビジネスパーソンのための契約の教科書(福井健策 著)

 

動機

・2021年12月から法務職に就くため

・契約書審査が主たる業務なのに「契約書がなんたるか」を全く勉強したことなかった

・就活で契約書審査やってみたが、司法試験の勉強が契約書審査に活きた感じがしなかった

 

メモ

2章

・p37

 少なくとも国際契約の場合、「書いてあることはそうなる可能性が十分ある」「書いていないことはして貰えない可能性が高い」と思ってのぞむべきですね。

【考えたこと】

 世界的に作品を展開してもらえることを期待して、著作権譲渡契約をしたけど、全く展開して貰えなかったケースでの言葉。

 日本では、「契約書は建前」という文化がまだ残っているところもあるそうで、口頭の相談内容が重視される空気があるそうだが、国際的には口頭の相談内容よりも契約書の記載内容の方が重要。グローバル化が進む中で、日本でも契約書をチェックする場合も、こうした心構えで臨むべきだと思う。

 

・p47

 このように、相手に権利を与える契約のゴールは、「相手が必要としていて、現に活用できそうな権利だけを与える」「それ以外の権利はこちらに残しておく」です。逆に権利を得る契約のゴールは、「対価が変わらないなら、将来活用する可能性のある権利は全部いただく」です。

【考えたこと】

 契約書を交わす場は、双方が自分自社に有利な契約を目指す、戦いの場であることを認識しておく必要がある。

 

・p58

 ライセンスを受ける側が交渉を尽くしたうえで、「取引をあきらめるよりはこの条件でやむなし」と、シビアな判断で条件を呑んでいるならば、基本的には当事者の自由です。

 しかし、内容をよく読まず、あるいは読んだとしても「きっと国際常識なんだろうからしょうがない」と、交渉もせずに呑んでしまうケースが多いとすればどうでしょうか。

【考えたこと】

 契約する際は、契約の内容を十分熟知し、かつ十分交渉したうえで行わなければならない。相手の文化的・個人的な事情よりも、自分や自社ののぞみを叶える努力をしなければならない。

 

・p70-71

ただ契約書の意味ははっきりしている場合、そしてそれは自分たちにとって圧倒的に不利な場合、アメリカ人であればとるべき行動は明確です。彼らの多くは「この条件は困るので、こう変えてくれ」とはっきり伝え、「交渉」をしようとするのです。

 しかし日本側は、国内契約だったら絶対に一蹴するような条件でも、「一蹴」や「交渉」ではなくしばしばこの「問い合わせ」をやります。何を問い合わせるか。一言でいえば相手方の「真意」を問い合わせるのです。

【考えたこと】

 ここでもやはり、アメリカ人は「自分や自社ののぞみ」が第一優先であり、日本人は「相手との調和」が第一優先であることの例を示しているように思う。

 交渉のスタートは、こちら側の希望提示から始める必要があると感じた。

 

4章

・p183-184

契約は、きつい言葉でいえば本質的に利益のとりあい、リスクの押し付け合いです。

 よくお互いに得をする関係をさして「Win-Winなビジネス」なんて言葉は耳にしますが、契約の「個別の条件」についていえば、そんなことは滅多におきません。(中略)

 ですから、ある条文がどうあるべきかを考えるときには、「自分にとってはどうあるのがベターか」というシビアな視点は欠かせません。よく、自分にとって有利不利ということを離れて、契約書全体の「完成度」を高めるために大半のエネルギーを費やしている方を見かけます。(中略)

 その姿勢は美しいですが、契約書はあくまでビジネスをおこなうためのツールであって文学作品ではないのです。「完成度」などよりも、「文章はすこし不細工でも、このたった一言があったために自社が不合理な損害をこうむるリスクが格段に減った」という一言を付けくわえ、かつ、相手にのんで貰える技術こそが、本当の職人芸です。

【考えたこと】

 相手にのんで貰える技術習得は、実践する中で鍛えられていくものであるが、「自分にとって有利不利」という視点は今からでも意識できる。

 

5章

・p189-197 契約黄金則について。この黄金則は筆者やクライアントの二十年の失敗から抽出された、「つまずきポイント」である。

黄金則その①:契約書は読むためにある

 ですから皆さんが、「読まずにこの場で印鑑を押せ」という空気を感じたら、必ずその空気を破ってください。(中略)

 そして、そんな空気を醸しだした相手に対して、次からちょっとだけ警戒してください。それは、相手が悪質だという意味ではありません。その相手は、うまいのです。

黄金則その②:「明確」で「網羅的」か

「明確」とは何か。それは複数の人が読んでも、ひとつの意味にしか受けとらないということです。(中略)

 では、どうやって、文章が「明確」かを確かめるのか。簡単です。慣れないうちは隣の人に読んでもらえばよいのです。

黄金則その③:契約書はコスト。コストパフォーマンスの意識を持つ

ここでの「パフォーマンス」とは何か、それは前に述べた「後日の証拠」「見落としや甘い期待の排除」といった契約書のメリットです。別な言いかたをすれば、「そこで契約書を作成することによって減らせるリスクの量」が、パフォーマンスです。

 

・p197-201 日本人の契約力の課題まとめ

①重要なのは「書式」よりも対話の力

前に述べたような「契約のコストパフォーマンス」を考えながら、自分にとって本当に大事な要望を相手につたえ、合意に至れる力。そうした対話の力こそが大切だと思います。

②合意至上主義、交渉決裂は「失態」という意識を乗りこえる

信頼関係はもちろん重要ですが、それは彼我の利害の違いをふまえて自分の立場をしっかり主張し、冷静に妥協点を見出してゆく姿勢から生まれるべきものです。

③国際契約を対等に近づける努力

しかし、英米では「バトル・オブ・フォームズ」(書式の戦争)という言葉があるくらい、契約は自国の言語で自分の書式を出したほうが、圧倒的に有利なのは紛れもない事実です。ですから、まずはこちら側のフォームを用意して、出してみる姿勢が大切です。

④業界知識・契約知識・相場感を知る

(ここで筆者は、相手の業界知識を学ぶ人は多いが、相手の交渉の方法を学ぶ人は少ないことを指定している。それを踏まえて以下の言葉。)

「交渉相手を知ること」は、契約交渉の基本です。

⑤契約交渉は必要なコストだという認識

⑥「花形」としての契約交渉セクションの育成