元ガリガリの筋トレ日記

【読書メモ】『隣のずこずこ』柿村将彦

 

 

日本ファンタジーノベル大賞2017を受賞した小説。

 森見登美彦みたいな、ひねくれたコミカルなファンタジーだと思ってた(狸が出るから)が、違った。

 自分の死生観を意識しながら読むことになった。「全てのものは終わり(死)を内包している」という「はじめ」の思考は、ファンタジーじゃなく現実的に自分も時々意識する事柄で、俺だったら死ぬことが決まった1ヶ月どう過ごすんだろうと、あくまでゆるーく考える機会となった。

 この疑問に答えはすぐ出なくて、すぐ出した答えはそれこそ「はじめ」が省みる思考である「わかったふり」だろう。

 すぐ出した答えと同様に、単なる記憶に価値があるのかについても考えさせられる。狸憑きは、一度聞いたことは絶対に忘れないのだが、その忘れていないことは果たして価値があるのだろうか。「はじめ」は姉や祖父が単なる記憶や思い出となったことを考える。単なる記憶や思い出は、その時感じていた感情を内包しない。それは良いことなのだろうか。つまり、「感情が伴う記憶や思い出が重要なのか」または「感情も含めた今ここ、が大事という禅的思考が大切なのか」。

 これにも答えは出ない。しかし、読む前よりも感情に目を向けようと私は思った。