元ガリガリの筋トレ日記

【映画メモ】『日日是好日』監督:大森立嗣

 

4.2/5点

良い映画&好きな映画。

 

 初めてワンショットだけで泣きそうになった映画。もちろんその前後のストーリーが前提にあるが、そのセリフのないショットだけでグッとくる。樹木希林演じるお茶の先生が黒木華演じる主人公の典子の就職試験合格を祈って床の間に飾っただるまの掛け軸を見上げるショット。少し斜めから正座した人の目線から撮ったショットは、和室とそこに座った人を最も美しく描く。それに泣きそうになった。

 全てのショットが大切にこだわって撮られているのが伝わってくる。和室やそこから見える風景、そこに座っている人をどう映せば美しく描けるのか、丁寧に考えられていると感じた。

 

 ショットだけではない。音も良い。川の流れる音、雨の音、柄杓から水指や茶碗に流れる水やお湯の音、柄杓を置く音、着物が畳と擦れる音、襖を開ける音、どの音もその音だけを味わえるほど十分な時間、他の音を入れずに聴かせてくれる。

 

 演者も良い。樹木希林は出てくるだけで笑いを誘うので、最初の大学生の典子たちにお茶を教えるシーンでは、もう少し厳格な先生の方がいいんじゃないかと違和感を感じた。でもなぜか、徐々にその違和感はなくなっていき、こういうお茶の先生なんだなと、いつの間にか受け入れて観てしまていた。受け入れたことも気づかない。うまく説明できないが、この自然と受け入れさせるというか映画に溶け込む力量が、樹木希林のすごいところなんだと思った。

 黒木華もすごい。彼女が笑えばこちらも楽しくなり、彼女が泣けばこちらも哀しくなる。20歳から30歳の女性を違和感なく演じれる。流石に40歳には見えなかったが。

 鶴見辰吾も良かった。「ご飯食べていきなさい」と典子に言うシーンでは、ショットも相まって『秋刀魚の味』の笠智衆を想起させた。

 

 和室や日本庭園、そこに流れる時間を大切に撮った映画はやはり大好きだ。